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生体認証技術の性能評価

生体認証技術の性能評価

生体認証技術の認証性能は、生体認証を導入するにあたり、ユーザが最も興味を示す指標の1つである。 認証性能をいくつかの尺度により数値として表現できれば、ユーザは単純に数値を比較することで認証性能を知ることができる。
現状でも製品の性能尺度に関する数値は明確にされているが、その数値だけではユーザの希望を満足させられないという実態がある。 本記事では、生体認証技術固有の、性能評価の難しさに関して記述する。

*) 評価データを統一することの難しさ

異なる認証技術を比較する場合、同じ評価データを用いない限り、正確に技術の優劣を測定することはできない。 生体認証に関しては、評価データは生体情報となり、個人情報保護の観点からデータの複製が困難なため、共通の評価データを保持することが簡単ではない。 また、静脈認証に関しては赤外線画像を用いるため、指紋や顔と違い、製品ごとに画像が異なり、共通の画像を定義することが難しいという問題点もある。

これらの理由もあり、評価者ごとに評価データを用意し、性能値を出しているのが実情である。 データが異なるので、評価結果の数値を単純に比較し優劣を決定することができない。

*) 必要な評価データ量の増大

生体認証技術の進歩により、現状の誤り率は以前と比較すると非常に小さくなっている。 結果として、認証性能を示すために必要なデータ量が、以前と比較すると大きくなり、評価コストが膨大になってきている。 より少ないデータで性能が測定できる手法が検討されているが、まだ確立されたものはない。 性能値を導出すること自体が難しくなってきている。

*) 評価仕様を統一することの難しさ

生体認証技術の評価仕様として規定されているものが存在しないため、評価者により評価仕様が異なっているのが実情である。 評価結果を単純に比較することができない。

生体認証の性能評価に関するISOの活動として、2002年に新設されたSC37の中のWG5で精度評価法の国際標準化に関して検討され、性能評価試験のフレームワークを記載したISO/IEC 19795-1が作成された。 この中で、FMR, FNMR, FAR, FRR, FTEなどの性能評価尺度が定義され、現在でも性能を表す指標として用いられている。 一方で、19795-1に記載されているのは性能評価のフレームワークであり、性能評価仕様が記載されているわけではない。 19795-1に準拠した評価であっても、同じ評価仕様にはならない。

また、提示された偽造物に対する性能評価に関しては、評価のためにどのような偽造物を作成すれば良いのか、という点で統一した指標がなく、こちらも比較が難しい状況となっている。

*) まとめ

これらの課題を解決するために多くの研究が進められているが、直ちに解決することは難しい。 このような状況の中で、どのように技術を説明し、利用者に納得してもらうか、製品開発側の姿勢が、もうしばらく問われ続けると考えている。


本記事の著者

出口 豊
株式会社モフィリア
経営管理部門 技術推進部長
2017年12月20日
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