生体情報を利用した新しい認証
生体認証は、指紋認証の研究から始まり、現在では顔・虹彩・声・静脈などの様々な生体情報が個人認証に利用されている。これらの生体認証技術が実用され、生体認証技術が広く知られるようになったのに伴い、様々な生体情報を用いた生体認証技術が研究されている。 本記事では、国内でのこれらの技術の研究を紹介する。
歩容認証
人の歩き方から個人を特定する歩容認証は、50m程度離れた遠距離から個人を認証できるという、他の生体認証にない特徴を持っていることもあり、多くの研究がなされている。 その中でも大阪大学は毎年多くの研究発表を行っており、研究をリードしている。 世界最大の歩容データベースを構築し、2013年には歩容鑑定システムをリリースしている。 科学警察研究所での実務評価が行われており、実用レベルに達しつつある。
ライフスタイル認証
また、東京大学では、運動履歴・位置情報・WiFi情報など、スマートフォンで計測可能な個人の行動を示す多くのデータより個人特性を抽出し、個人認証を行う研究を行っている。 今年、57,000人という大きなスケールの実証実験が実施された。今後の研究の加速が期待される。
その他の生体情報を用いた認証
その他、まだ研究レベルではあるが、人間の耳穴の形状によって決まる音の反響を用いるもの(NEC)、生体部位の微細パターンとして、マイクロスコープで拡大した肌理画像を用いるもの(静岡大学)、ドアノブを握った際の握掌画像を用いるもの(鹿児島大学)、立ち止まっている人物から計測される身体動揺を用いるもの(鳥取大学)、など、様々な生体情報が利用されている。
ソフトバイオメトリクス
これらの生体情報は、「個人性を含んでいるが、十分に個人を区別できるような弁別性や恒久性を備えていないもの」と言えるが、これらはソフトバイオメトリクスと呼ばれることもある。 単体では個人を特定することが難しいので、他の生体認証手法と組み合わせ、認証精度改善や認証速度向上を目的として利用するのが一般的である。 今後は、思ってもみないような生体情報が、コンピュータ処理され個人認証に用いられるかも知れない。
本記事の著者
出口 豊 株式会社モフィリア 経営管理部門 技術推進部長 |